具体的に解説!朗読で地の文とセリフをスムーズにつなぐポイント

こんにちは。
声と体で小説の世界を
生き生きと表現する舞台朗読研究所
S-R Labo 松井みどりです。

今回は「朗読で地の文とセリフを
スムーズにつなぐポイント」

についてお話します。

地の文とセリフをスムーズにつなぐポイント

舞台朗読では
地の文とセリフを
スムーズにつなぐこと
とても大切です。

ここで考えたいのは
顔を振るタイミング
ブレスの間です。

今回は
「地の文→セリフ or セリフ→地の文」
「セリフ→セリフ」

ふたつのパターンに分けてお話します。

地の文→セリフ or セリフ→地の文

地の文→セリフ、
あるいはセリフ→地の文の場合、
急いで移動する必要は
ありません。

まず基本的には地の文は
自分の正面に向けて
読んでいきます。

そしてブレスをしながら
上下(かみしも)どちらかを
見ます。

大切なのは、
ブレスをしている時に
もうこれからセリフを言う
人物になっている
ことです。

セリフを言い始めてから
その人になるのでは
遅いんですよね。

シーンにもよりますが、
通常は急ぐ必要はありません。

ゆっくりブレスをしながら
セリフを言う人物の体に
なってください。

そしてセリフを言ったら
なんとなくぬるっと
本を見るのではなく、

セリフを言い終わってからも
しっかりその人として
そのままいてください。

ほんの0.5秒でもいいので
その人物としてそこにいてから
ブレスをするタイミング
本に目を落とします。

それから地の文を読みだすと、
とてもスムーズ、かつわかりやすく
地の文とセリフを行き来することが
できるのです。

【参考】顔を振る角度

落語の世界では、
自分の正面から左右30度
に首を振ると、
自分の正面にいる人と。

左右60度に首を振ると
自分の横にいる人と。

左右90度に首を振ると
自分の後ろにいる人
話していることに
なるのだそうです。

これ、舞台朗読でも
全く同じです!

大きく顔を振り過ぎる
会話の相手がどこにいるのか
わかりにくくなるので
気をつけましょう。

セリフ→セリフ

セリフ→セリフの場合は、
まずAのセリフを言ったら、

素早く顔を逆に振って
ゆっくりブレス
をしながら
Bの体になってリアクションします。

この顔を振るタイミング
大きなポイントです。

この時、
顔を振るのとブレスが同時
になってしまう方が
とても多いです。

それだと顔を振ったら
すぐセリフを読むことになり、
リアクションを取る時間が
ありません。

「セリフ→地の文」と同じ
になってしまうのです。
これでは会話をしているように
見てもらうことができません。

感覚的に音符で表現すると、

「地の文→セリフ or セリフ→地の文」
 地の文→セリフ→地の文
    ♩   ♩

「セリフ→セリフ」
 セリフ → セリフ → セリフ
    ♪♩   ♪♩
◡    ◡

ちょっとわかりづらいですが、
→で表現したブレスの間が
四分音符一拍分なのが
「地の文→セリフ or セリフ→地の文」で、

八分音符プラス四分音符なのが
「セリフ→セリフ」ということです。

八分音符の分だけ
「セリフ→セリフ」の方が
早く顔を動かしてから
ゆっくりブレスをする、ということです。

厳密なものではなく
感覚的なものですが、
なんとなくわかっていただけるでしょうか。

この八分音符分のわずかな間
取れるかどうかが、
自然な会話をひとりで行う時の
大きなポイントとなるのです。

具体例

それでは具体例を出して
もう少し詳しく説明します。

① 杜子春はまだ眼に涙を浮べたまま、思わず老人の手を握りました。
②「いくら仙人になれたところが、私はあの地獄の森羅殿の前に、鞭を受けている父母を見ては、黙っている訳には行きません」
③「もしお前が黙っていたら――」
④ と鉄冠子は急におごそかな顔になって、じっと杜子春を見つめました。
⑤「もしお前が黙っていたら、おれは即座にお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ。――お前はもう仙人になりたいというのぞみも持っていまい。大金持になることは、元より愛想がつきたはずだ。ではお前はこれから後、何になったらいと思うな」
⑥「何になっても、人間らしい、正直な暮しをするつもりです」

芥川龍之介「杜子春」より

この「杜子春」を例に
地の文とセリフの行き来について
具体的に解説します。

まず①の地の文を読んだら
ここは「地の文→セリフ」ですから
ブレスをしながら
顔を左(上手)に振ります。

四分音符の分ブレスをしながら
杜子春の気持ちになり、
両親のことを思いながら
②のセリフを読みます。

②のセリフを読み終わったら、
なるべく速く顔を右(下手)に振り、
ゆっくりブレスをしながら
仙人の気持ちになります。

八分音符プラス四分音符の分のブレス。
顔は素早く、ブレスはゆっくり。
ちょっと難しいですね。

そして厳かに③のセリフを読んだら
焦らずにじっと杜子春を
見つめる間を取りましょう。

杜子春を見つめたまま
動かない…というイメージです。
時間は1秒ほどで十分ですが、
結構長く感じると思います。

勇気を持って
間を取ってみてください。

その後は「セリフ→地の文」なので
四分音符分のブレス
取ってから④を読みます。

次は「地の文→セリフ」なので
四分音符分ブレスをしながら右に振って
⑤のセリフを読みます。

このセリフはとても
大切なセリフなので、
きちんと杜子春に
言い聞かせるように読みましょう。

⑤から⑥は
「セリフ→セリフ」なので、
⑤を読み終わったら
パッと顔を左に振ります。

そして八分音符プラス四分音符分
ゆっくりブレスをして、
杜子春が答えを探す間を再現します。

ここでも
顔は速く、ブレスはゆっくりです。

⑥のセリフは最初は下を向いて
自分に言い、それから顔を上げて
仙人に言うようにすると、
杜子春の決心が伝わります。

こんな風に読めると、
杜子春と仙人の会話を
ひとりでも
生き生き読むことができます。

まとめ

今回は「朗読で地の文とセリフを
スムーズにつなぐポイント」

についてお話しました。

朗読において、
地の文とセリフをスムーズに
つなぐこと
は、
とても大切です。

ほんのちょっとの
顔の振り方とブレスの間
伝わり方が変わります。

物語を立体的に立ち上がらせて
お客さまに伝えたい方は、
ぜひお試しください。

S-R Labo主宰
松井 みどり

元フジテレビアナウンサー。退社後はナレーターとして活動する一方、舞台活動もスタートし、芝居、朗読、朗読劇などの舞台に年に10本ほど参加。2014年より教える仕事も続けている。

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