こんにちは。
声と体で小説の世界を
生き生きと表現する舞台朗読研究所
S-R Labo 松井みどりです。
今回は朗読したい作品
「木曜日にはココアを」
をご紹介します。
作者・青山美智子さんについて
作者の青山美智子さんは
大学卒業後、オーストラリアに渡り、
帰国後に雑誌編集者を経て
作家活動に入った方です。
なるほど~。
今回ご紹介する
「木曜日にはココアを」にも
オーストラリアのパートが
何章かあるんです。
記述がとても具体的で
きっと行ったことがある
ところなんだろうな、とは
思っていましたが、
実際に住んで
日系新聞で記者を2年も
されたというんですから、
その生活感のある記述にも
納得です。
2003年にパレット大賞の佳作に
入ったことから
本格的に執筆をはじめ、
2017年8月に、
今日ご紹介する
「木曜日にはココアを」で
小説家デビュー。
「お探し物は図書館まで」は
今年、2021年の
本屋大賞で第2位となりました。
「木曜日にはココアを」について
この本は、12編の作品からなる
連作短編集です。
本の後ろに書かれている
この物語の紹介文を引用します。
川沿いの桜並木のそばに佇む
喫茶店「マーブル・カフェ」。そこカフェで出された
一杯のココアから始まる、
東京都シドニーをつなぐ
12色のストーリー。卵焼きを作る、
ココアを頼む、
ネイルを落とし忘れる……。小さな出来事がつながって、
最後はひとりの命を救う――。
あなたの心も救われる
やさしい物語。
ひとつひとつの物語は
いろいろな立場で悩んでいる
人たちなのですが、
別に自分と同じ環境の
人じゃないのに、
スッと感情移入して
読んでしまいます。
作者の筆力なんでしょう。
とても読みやすい作品
ばかりです。
連作短編は、
どんな風にそれぞれの話が
つながっていくのかが
読みどころのひとつですが、
青山さんはそこが非常に
上手な作家さんです。
読んでいる作品に
少しだけ出てきた人が
次の作品の主人公になる…。
それがまた
ものの見事につながっていて、
そして最後に戻ってくるのが
素晴らしいです。
みんなそれぞれ
悩みながらがんばっている…。
悩みはとてもリアルなのですが、
どの作品を読んでも
最後には心がほんわかします。
そして中には
ふっと目頭が熱くなる作品も…。
とにかく「優しい」という
言葉がぴったりの物語です。
朗読におススメする理由
長さがちょうどよい
まずは長さが朗読には
ちょうどよい、というところが
おススメポイントです。
ひとりで読む場合は
10分から15分ほどのものが
ちょうどいいかなと思いますが、
この本の作品は
だいたい15~20ページほど。
短いものは10ページほどなので、
朗読にはぴったりの長さです。
短い作品の中で
ちゃんと感動できる話は
とても少ないので、
この作品はとても貴重です。
実際、いろいろなところで
朗読や朗読劇として
発表されています。
後述しますが長さだけではなく、
色々な面で朗読との相性が良い
せいではないかと、
私は思っています。
一人称の作品が多い
連作短編には
語り手が次々と変わる
一人称で書かれた作品が
多いのですが、
この作品もほとんどが
一人称で書かれています。
人が読んで伝える
「朗読」という表現手段にとって、
一人称の文章は無理がなく、
読みやすい作品といえます。
一作だけ三人称の物語がありますが、
それも童話のような語り口で、
とても読みやすいです。
皆さんが朗読したくなるのが
よくわかります。
読後感が抜群に良い
そしてこれも
多くの方にこの作品が
支持されている理由。
「読後感が抜群に良い」
ということです。
どの作品もハッピーエンディング。
明るく、温かい気持ちで
読み終えることができます。
青山さんご自身は
「縁」というものを
大切にされていて、
「縁というバトンをリレー形式で
渡していく、という書き方が面白かった」
とおっしゃっています。
また一見、自分とは違う人に
見えたとしても、
人間の営みは普遍的で、
どこかで歩み寄ることはできる…
という想いも
持っていらっしゃるそうです。
やはりオーストラリアでの体験が、
彼女に大きく影響を与えている
のでしょう。
年代を超えて様々な方に支持される
この作品。
青山さんのご自身の温かい考え方が
作品に表れているんですね。
まとめ
今回は朗読したい作品
「木曜日にはココアを」
をご紹介しました。
素敵な短編を書く
作家さんと出会えて、
リーディングパフォーマーとして
本当に嬉しいです。
青山さんは
「書きたい作品が次から次へと
溢れ出てくる」と
話していらっしゃるので、
これからもたくさんの
素敵な作品を書いてくださると
思います。
皆さんもぜひ、
彼女の作品を読んでみてください。
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