朗読したい作品「晩夏のプレイボール」あさのあつこ

こんにちは!
「小説を演じる小説劇研究所」
S-Rラボ 松井みどりです。

今回は朗読したい作品
あさのあつこさんの
「晩夏のプレイボール」
ご紹介します。

作者・あさのあつこ氏

経歴

「晩夏のプレイボール」の作者は
あさのあつこ氏。

教員を2年勤めた後、結婚。
子育てをしながら作品を書き、
37歳の時、「ほたる館物語」
デビュー。

その後は1997年に「バッテリー」
野間児童文芸賞を受賞。

この作品は幅広い世代の支持を得て、
児童文学としては異例の
1000万部ベストセラーになりました。

あさのさんと言えば、
この「バッテリー」で
ご存じの方も多いでしょう。
全6巻の大作です。

現在も少年少女小説はもちろん、
一般向け、時代小説と
様々な作品を書かれています。

作風

もともとは「バッテリー」で
注目されたので
少年少女向けの作品
多かったのですが、

とても少年少女向けと
ひと口には言えない、
大人でも十分楽しめる
心理描写&状況描写が魅力です。

実際、「バッテリー」は
大人が読んでも泣けます。

私は野球が好きなので、
あさのさんの野球小説
本当に大好きです。

野球の真剣勝負のドキドキ感
人間ドラマが加わってくるので、
スポーツ好きにはたまりません!

ご本人はあまり
スポーツにこだわって
書いてらっしゃるわけでは
ないようですが、

スポーツの持つ輝き
素晴らしさと同時に、
その残酷さが重みを持って
書かれています。

でも、野球小説と言っても
やはり人間ドラマ
物語なんですね。

文体も読みやすく、
朗読にも、とても向いています。

「晩夏のプレイボール」

概要

「晩夏のプレイボール」は
2010年に角川文庫から
刊行されています。

単行本は2007年に
朝日新聞社から刊行されて
いるそうですが、
私は文庫で読みました。

この本は
野球にまつわる10作品を
集めた短編集です。

実際に野球をやっている
男の子、女の子の視点だけでなく、

その親や、昔野球をやっていた…
など、様々な立場の人間を
野球を軸としてえがいています。

「野球って、青春って
素晴らしい!」
というだけでなく、
人生の辛さ残酷さも十二分に
書かれていて、

非常に読み応えのある
短編集です。

おススメの作品

練習球&練習球Ⅱ

この作品は、
この本の最初と最後の
作品です。

「練習球」の主人公は
ピッチャーの鴻山真郷
(こうやままさと)。
高校3年生です。

場面はいきなり
夏の甲子園、地区予選準決勝。
そこでもう、
話の中にグッと惹きこまれます。

この真郷が野球を中心にして
生きてきた高校3年間。

栄光や挫折を経験し、
今、最後の打席に立つ…。

この一打席にかける想い
ひとつの作品を通して
読者は知ることになります。

いや~、鳥肌立ちますよ!

そして「練習球Ⅱ」
真豪のチームメイト
同じ高校3年生の
麓水律(ろくすいりつ)が
主人公。

同じピッチャーをやりながら
真郷とは正反対の
いじめにあうような
繊細な少年でした。

それが真郷に出会い、
いろいろな経験をして、
少しずつ律も
変わっていきます。

練習球
そんな二人の気持ちをつなぐ
重要なアイテム。

ラストシーン、
この試合の結果は書かれていませんが、
少年から青年へと成長する彼らが
本当にまぶしい!

ふたりのタイプの違う高校生の
成長物語ですが、
そんな簡単な言葉でまとめられない
圧倒的なリアル感があります。

私はこの2作品を
朗読したことがあります。

この時は小学生メインで
聴いてもらったのですが、
子どもたちは身じろぎもせず
聴いてくれました。

そして終わってから
父兄の方々
「良かったです!」と
声を掛けていただきました。

やはりあさのさんの作品は
大人にも子どもにも
確実にヒットするのです。

朗読する時には
真郷と律の読み分け
ひとつのポイントになります。

あとは野球の試合中の
緊迫したシーン
動きのあるシーン
表現の仕方を考えたいです。

空が見える

この作品は
私が初めて読んだ時から
ずっと読みたいと
切望している作品です。

主人公は
郁元(いくもと)和子。
50代後半の主婦。

夫の幸造は重い病で
入院しており、
その看護を続けています。

彼らには陽司という
息子がいました。

「いました」というので
お分かりかもしれませんが、
不幸な事故で亡くなったのです。

陽司は野球が好きでした。
和子もずっと応援していたのですが
あっけなく陽司は
逝ってしまいます。

そして今、
夫まで失おうとしている和子に、
ある奇跡が起こるのです…。

もう、何度読んでも
涙なしには読めません。

自分とは全く違う
人生を生きている人に
こんなに感情移入できるなんて
本当に不思議です。

でも和子の気持ちが
切なくて…
そしてこの夫婦に
もう少し時間をあげてほしい。

切実にそう思ってしまいます。

物語の世界の話なのに
こんなに心底思ってしまうとは…。

やはりあさのさんの
人間のえがき方は、
本当に素晴らしいです。

朗読することを考えると
感情的になりつつ
感情的になり過ぎない
という
バランスが難しいです。

あとは和子の気持ちに
どれだけ寄り添って読めるか

ポイントになると思います。

驟雨(しゅうう)の後に

この作品の主人公は
高校3年生の加奈

小学生の時
男の子に交じって
大好きな野球チーム
入っていました。

野球をやれることが
本当に楽しくて、
これからもそんな日々が続くと、
そう思っていたのに…

女の子は中学生になると
野球を続けることは
できない
のです。

その残酷な現実
打ちのめされる加奈。

同級生の柳一
そのことを突きつけられ、
高校でも野球を続ける彼とともに、
野球そのものを避けるようになります。

しかし高校3年生になり、
これからのことを
真剣に考え始めた時、
もう一度野球を見る機会が
訪れたのです…。

野球をやっている女の子の
大きな挫折の話ですが、
野球じゃなくても
女性には特有の挫折
訪れることがあります。

私は実況アナウンサーに
なりたかった頃があります。

その時は真剣にそう思っていたので
同じような厳しさを
たくさん感じました。

いろいろな分野で
がんばっている女性には、
特に感じるものがあるかもしれません。

ラストの爽やかさ
この作品の大きな魅力です。

朗読する時には、
加奈の衝撃をどう表現するかですね。

驚き落ち込んだ気持ちもあり、
でも平静を保とうという
気持ちもあり…

揺れる18歳の瑞々しさを
少しでも表現して読みたいです。

まとめ

あさのあつこ氏
「晩夏のプレイボール」
についてお話してきました。

この本は野球
モチーフにしているので
スポーツ好きの方には
特におススメです。

でも、何度も言いますが、
この本の主題は
野球ではありません。

野球と直接的、間接的に
関わってきたそれぞれの人間が
これからの人生を
どう生きていくのか…

それを見事にえがいた
作品です。

閉塞感を感じたら、
ぜひ読んでみてください。

物語の中の青空が、
きっとあなたにも
見えるはずです。

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S-R Labo主宰
松井 みどり

元フジテレビアナウンサー。退社後はナレーターとして活動する一方、舞台活動もスタートし、芝居、朗読、朗読劇などの舞台に年に10本ほど参加。2014年より教える仕事も続けている。

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