こんにちは。
声と体で小説の世界を
生き生きと表現する舞台朗読研究所
S-Rラボ 松井みどりです。
今回は
「小説劇の稽古の進め方」
についてお話します。
小説劇の稽古の目的
朗読の稽古は、
お手本があって、
それと同じことが何度やっても
できるようになること…
ではないと、私は思います。
もちろん最初は、先生のお手本を
完全コピーしながら、
朗読の「カタ」を手に入れるため、
毎回安定して
同じことができる、
ということも大切です。
そして練習と同じことが
本番でもできる、
ということも重要です。
しかし、すでに何年も
朗読をやっていらっしゃる方、
芝居や歌など、別の表現活動を
長くやってこられた方は、
すでに持っているものを
基礎として、
自分の表現を突き詰めていく、
というレベルになります。
それであれば、
毎回同じことができるように…
という稽古ではもったいない!
と思うのです。
作品をじっくり理解した上で、
作り上げたものを一度手放し、
その瞬間に自分が感じたことを
作品に反映させ、
自由に表現できるようになる。
それこそが、
小説劇の稽古の目的
だと思います。
そのための稽古の流れを
具体的にお話します。
小説劇の稽古の進め方
言葉を読めるようにする
まずは台本を読みながら、
読めない漢字や
読みづらい個所を
チェックします。
読めない漢字は
その場で調べて仮名を振ります。
私は初見で読んだ時に、
よ~く知っている漢字であっても
なぜか読みづらかった時は、
躊躇なく仮名を振ります。
台本は誰に見せるものでも
ありません。
自分のためのものですから、
気になったら仮名を振りましょう。
漢字だけじゃなく、
なぜかこの文章は読みづらい、
ということもあります。
そこには理由があるのですが、
まずは読めない、言えないところに
点やチェックをつけ、
そこだけは意識して確実に読みます。
例えば
「コンクリートで打設し~」
という文章があります。
(マニアックですね~)
一回読んだ時に読みづらかったので
「打設」に「だせつ」と仮名を振り、
「コンクリートで」の「で」と
「打設」の「だ」に点をつけます。
・・
「コンクリートでだせつし」
仮名を振った部分は
このようになります。
すると、だ行の二つの音が
隣り合っているから
読みにくいのだということが
わかります。
ここまで理解できたら、
「でだ」のところを
意識してしっかり出せば、
きちんと読めるようになります。
こんな風に、まずは
「読める」よう台本に書き込み、
必要なら読めるように練習します。
最初から読み、全体の構成を理解する
次に最初に戻って
読んでいきます。
今度は物語の構成を
理解することを目指します。
最初にこんな説明があり、
そこでこんな事件が起こって、
こんな劇的なことがあって
最終的にこうなる、
というような流れです。
これを理解することで、
その物語のどこがポイントになるのか、
特に伝えたい部分、山場は
どのシーンになるのかを理解します。
それが理解できると、
どんな風にそこまで盛り上げていくか、
繋げていくかの計算ができます。
ここは静かに淡々と読んでおいて、
ここから徐々に盛り上がり、
ここで最高潮になる!
というような流れです。
例えば芥川龍之介の
「蜘蛛の糸」では、
最初に極楽のシーンから
始まります。
夢のような美しいところから始まって、
次の地獄のシーンでは
主人公・犍陀多(カンダタ)が登場。
実に人間らしく、
自らの欲望を露にし、
最後には糸が切れて落ちていく…
という動きのあるドラマチックなシーン。
そしてまた極楽に戻ると、
それを見ていたお釈迦様。
人間ではない彼(彼女?)には
犍陀多が理解できません。
ひとりの人間にこれだけの
大事件が起こったのに、
極楽は全く影響を受けず、
「あら、もうお昼ね…」
という、3つのブロックに
分かれます。
この構成が理解できると、
極楽を人間離れした、
美しいものとして表現しておけば、
地獄になった時に
その変化が大きくつき、
ドラマチックな展開になるのです。
こんな感じで
ざっくりでいいので、
構成をつかんで読むことに
慣れましょう。
表現したい部分の表現方法を考える
物語の構成をつかんだところで、
それぞれのシーンを
どう表現したら面白くなるかを
考えます。
小説劇では
「椅子から立ってはいけない」
などの決まりはないので、
自由に表現できます。
立つことが有効ならば
立って動いてもいいし、
動きをつけた方が有効ならば
マイムをするのもありです。
それをどのくらいやるかが
演者、語り手の個性です。
その時は、どう表現したら
そのシーンやその人物を、
お客さまにイメージして
もらいやすいかを考えていきます。
いわゆる演出と言われる
部分です。
芝居には演出家がいるので
いろいろと指示が出ますが、
朗読は基本的にはひとりで
作っていくものなので、
自分で自分を演出する
必要があります。
読み方だけでなく
動きや全体を大きく見て、
どう見せていったら
面白いのかを考えます。
例えば前述の「蜘蛛の糸」。
私なら、最初の極楽のシーンで
お釈迦様が蜘蛛を見つけるところは、
リアルに「気づく」という
動きを入れます。
ほんのちょっと顔を振り、
実際に「あ、いた」と気づく
動きを加えると、物語がほどよく
立体的になるからです。
もっと大きく動くこともあるので、
場合によっては
動きや読みの抜き稽古が
必要な場合も出てきます。
全体を通して、バランスを考える
最後に自分が演出した流れで
最初から読み進め、
思っているような効果が
得られているかを確認します。
この時は
必ず動画を撮影し、
客観的に確認してください。
これを繰り返すことで
作品を作り上げていきます。
まとめ
今回は
「小説劇の稽古の進め方」
についてお話しました。
ここに書いたような稽古を
十分やった上で、
本番では一度全部手放し、
自由に表現します。
すると、やるべきことは
すでに体の中にありながら、
その時に感じたことも
自由に表現できるようになります。
私の考える小説劇は、
そういうものです。
表現活動には
いろいろな稽古のやり方が
あります。
どれも正解。
間違いはありません。
あとは、ご自分が
「面白い!」と思う方向へ
どんどん進んでいけば、
そこに、他の人には真似のできない、
あなただけの表現が見つかります。
深い深い、表現の道。
道のりは険しく、長いですが、
その時その時のゴールを決めて
一歩ずつ進んでいきましょう。
コメント
無料メルマガの会員登録しました。朗読始めてまだ2年です。あさのあつこさんの晩夏のプレイボールを朗読したいと思っているのですが 著作権の問題が有ります。角川文庫やあさのあつこさんのページにいっても分かりません。お手数ですが方法教えて頂けませんか 私も高校野球で甲子園に出場しましたが 大学野球で怪我をして プロ野球を断念した経過があります 現在74さい 人生の集大成で是非朗読したいと思っています お手数ですがもしよろしければ宜しくお願いします
こんばんは。コメントありがとうございました。
角川文庫のHPを調べてみましたが、確かにわかりづらいですね。https://license.kadokawa.co.jp/guideline/ こちらのページの一番下に、部分利用についてですが、「演劇、朗読会に使用したい場合」と書いてありますので、ここが一番近いかと思います。この内容を https://license.kadokawa.co.jp/contact/ こちらから入力していくのではないかと思われます。申請すれば、何がしかのコンタクトが先方からあるはずです。朗読を公にするのでしたら許諾がいりますが、個人で楽しみのために読んだり、家族や知り合いに聴いてもらう程度でしたら、許諾を取らなくても許容範囲かと思います。しかし、ご心配であれば確認するのが一番だと思います。