こんにちは。
声と体で小説の世界を
生き生きと表現する舞台朗読研究所
S-R Labo 松井みどりです。
今回は「セリフを違和感なく
読み分ける方法」について
お話しします。
「違和感なく」が重要!
セリフの読み分けについて
セリフを読み分ける方法については
過去にこんな記事を書いています。
上の記事は実際の読み方、
下の記事は体の使い分けについてです。
その時にもお話していますが、
私は基本的にセリフを読む時に
声を変える必要はないと思っています。
声優さん、ナレーターさんの中には
完璧に声質を変化させて
全く違う人の声を
出すことができる方もいます。
これはもちろん
誰でもできる訳ではない、
素晴らしい技術です。
ただ舞台朗読では
自分の体がお客さまに丸見えなので、
声だけが変わると違和感を感じます。
この違和感がないように、
でも物語を立体的に
イメージしていただけるように
読んでいきたいわけですが、
そもそもなぜ違和感を
感じるのでしょう?
それは聴き手の脳が
混乱するからではないかと
私は考えています。
「声は完璧に違うのに同じ人だ…」
ということに対して、
私たちの脳が違和感を感じ、
混乱してしまうということです。
ここで違和感を感じられてしまうと
物語に集中してもらえません。
ですからセリフを違和感なく読み分け、
地の文の中に収めて
ひとつの物語として聴いていただく
ということが重要になります。
体が先、声は後から
そのためにはどうしたらいいのでしょう?
私は声で演じ分けようとせず、
体をその登場人物に寄せることを
いつも考えています。
体が変わると、自然に声も変わります。
先ほどの脳の話で考えると、
ほんの少しでも体が変わっていると
聴き手の脳は「違う人物が話している」
と認識してくれるようなのです。
物語を読み進めていく時に、
自然にその変化がつけられれば
聴き手も違和感を感じません。
そのためには何が大切なのか、
3つのポイントにまとめてみました。
違和感なく読み分ける3つのポイント
地の文→セリフ
地の文を読んでいて
いざセリフ!となった時に
いきなりパッと体を変えると、
物語が一度切れてしまい
スムーズに流れません。
前の地の文を読み終わったら
ゆっくり息を吸いながら
その人物になってください。
息を吸うのと同時に一度目を伏せ、
目を上げた時にその人物になっていると
地の文とセリフが自然に流れます。
①AはBの机に置いてある本を手に取った。
②A「この本、貸してくれる?」
①を正面に向けて言ったら、
息を吸いながら一度目を伏せます。
息を吸いながら目を上げた時には
Aになっているとイメージしてください。
いろいろな状況が考えられますが、
例えばAに何か強い意図がある場合なら
顔を上げてキッと相手を睨むように見ます。
すると硬く緊張した声が
自然に出てきます。
誰かを睨んでいる時に
優しい声を出すことはできません。
またAが片思いの相手に言っている場合、
相手をなかなか直視できず、
目線が下に下がってしまいます。
するとおどおどしたような状況を
表現することができ、
出てくる声も弱く小さくなります。
このように良いタイミングで
セリフに移行し、
顔を上げた時にその人物の体を
表現できると、
自然に状況に応じた声に
変化するのです。
しかもとても自然に聴き手に
伝わります。
セリフ→地の文
セリフのやり取りの時は
いい雰囲気でセリフを言えるのに、
セリフが終わって地の文になった途端に
バツッと地の文の体に
変わってしまう方がいます。
地の文からセリフになる時も重要ですが、
セリフから地の文になる時も
同じくらい重要です。
これも例文をあげて説明します。
①A「それから…こっちの本も貸してもらえる?」
②と、AはBの後ろの本棚にある本を指差した。
状況としては先ほどの例文の続きです。
①のAのセリフを言ったら
目線をパッと下向きに外し、
息を吸いながら体を戻してから
地の文を読みます。
体はそのまま、目線だけ先に移動です。
ここで体も動かしてしまうと
完全に流れが切れてしまうので、
気をつけましょう。
その後息を吸いながら
体を正面に戻して地の文を読みます。
体を変化させるタイミングは
以上のようになります。
ここにそれぞれの状況の
Aの体を乗せてみましょう。
何か強い意図がある場合、
相手の目を直視しながら
言い放ちます。
顔をしっかり上げて体を起こすと、
声にも力が伝わり強い声が出ます。
また片思いの相手に言っている場合、
ここでも相手の顔は直視できないので
顔を伏せ、体もやや猫背気味に。
すると先ほどのように
弱い、途切れがちな声になります。
セリフから地の文になる時は
目線を動かしてから息を吸う。
焦らずにスムーズな流れで
地の文に移行しましょう。
セリフ→セリフ
セリフからセリフに移行する時は、
セリフ終わりで息を吸いながら
もう一人の人物に変化します。
体を切り替えるのは息を吸う時。
目線を意識して下げる必要は
ありません。
セリフのやり取りが長くなると
あまり大きく動くのは大変ですし、
そうなったらそんなに動かなくても
2人の人物が会話をしていることは
聴き手に伝わります。
ですからセリフのやり取りの中では
印象的なところだけ体を使い、
あとはセリフに集中しましょう。
具体的なセリフと地の文の
読み方については
こんな記事も書いています。
まとめ
今回は「セリフを違和感なく
読み分ける方法」について
お話ししました。
私は人間の脳には
素晴らしい力があると思っています。
ほんの少し動くだけで、
その差を理解できるのです。
だからちょっと背中を丸めたら
「あ、おばあさんだ」と思うし、
背筋を伸ばして見上げたら
「子どもなんだ」と理解してくれます。
朗読は、この聴き手の脳の想像力に
負うところが大きい表現方法です。
もちろん声だけでも
様々に想像していただくことは
できるのですが、
せっかくお客さまの前で読むのなら
視覚という情報もお渡しし、
想像の助けにしてもらいたい。
私はそう思って舞台朗読をしています。
声と体の関係をうまく使って、
色々な物語をお客さまに
さらに楽しんでいただきましょう!
コメント