速さだけじゃない!朗読のテンポが一定になってしまう時の対処法

こんにちは。
声と体で小説の世界を
生き生きと表現する舞台朗読研究所
S-R Labo 松井みどりです。

今回は「朗読のテンポが一定に
なってしまう時の対処法」

についてお話します。

テンポが一定になる時の対処法

朗読している時に
「テンポが一定」
「ベタ読み」

などと言われることがあります。

普通に話している時は
自然にブレスをしながら
話しているので、
自然にテンポが変わっています。

しかし「読む」となると
そのテンポが一定になってしまう
ということはよくあります。

そういう時に
考えたいことを2つお伝えします。

注目する2つのポイント

ひと口に「テンポ」と言っても
いろいろあります。

まずは文章を読む時の
速さを変化させる
ということがあります。

速く読んだり、ゆっくり読んだり、
ということですね。

もうひとつ、
文章と文章の間の間(ま)を
変化させる
、という方法があります。

普通にブレスをする間を
「1」とすると、
短くするときは「0.5」くらい、
長くするときは「2」のイメージです。

今日はこの2つの
テンポを変える方法について、
具体的にお話します。

読む速さを変える

読む速さを変える、
ということは
実はそんなに多くありません。

やはり聞いてわかる速さには
限度がありますし、
あまり大きく変化がつき過ぎる
聴き取りにくいからです。

例文を上げて説明します。

 自分は()(とお)るほど深く見えるこの黒眼の色沢(つや)を眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに枕の(そば)へ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。すると女は黒い眼を眠そうにみはったまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。
 じゃ、(わたし)の顔が見えるかい一心(いっしん)に聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。
(夏目漱石「夢十夜 第一夜」より)

この文章の
「じゃ、私の顔が見えるかい」
他の文章より速く読んだ方が
効果的
なところです。

これは男のセリフです。
この場合は「」がついていないので
必ずしもセリフのように
読む必要はありません。

しかし「一心に聞くと」と書いてあるので
それを表現するために
勢い込んでここだけ速く読むと
必死な感じを表現できます。

また「にこりと笑って見せた」
ゆっくり読みたいところです。

そんな風に勢い込んで聞いてくる男を
あしらうかのようににっこり笑う…
その雰囲気を出すために、
他の部分よりゆっくり読んでみてください。

速く読む部分は、
セリフのように書かれているところや、
緊迫感、勢いのあるところが多いです。

逆にゆっくり読む部分は、
聴き手にイメージをゆっくり
味わってもらいたいところです。

気持ちのまま、自然に
スピードが変化するのが理想ですが、
最初は文章をゆっくり理解しながら
そのポイントを見つけてください。

「間(ま)」の長さを変化させる

次に、文章と文章の間の
間を変化させる方法についてです。

テンポを変える時には
こちらを使う方が
圧倒的に多いです。

文章と文章の間は、
ひと呼吸(ブレス)の
「1」の間が基本です。

前の文章と次の文章が
内容的につながっている
場合、
その間を少し詰めて
「0.5」だけ取ります。

大きく場面が変わる場合
ふた呼吸分、
「2」の間を取ります。

これが基本的な考え方です。
必ずしもすべての文章に
対応することはできませんが、
読みながらコツをつかんでください。

こちらも例文を見ながら
具体的にお話します。

①自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。
②真珠貝は大きな(なめら)かな(ふち)(する)どい貝であった。
③土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。
湿(しめった土の(におい)もした。
⑤穴はしばらくして掘れた。
⑥女をその中に入れた。
⑦そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。
⑧掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
(夏目漱石「夢十夜 第一夜」より)

同じ「夢十夜 第一夜」
続きの部分を持ってきました。
説明のために文章に
番号をふっています。

まず①を読みます。
この文章の「真珠貝」という
大切な言葉を説明するのが
②の文章です。

改めて大切な話をするので、
①から②は普通の間
「1」の間を取ってください。

男は真珠貝の説明をしながら
ずっと穴を掘っています。
(という風にイメージしてください)

続く③は「掘っている」という
時間経過を感じながら、
「1」の間で読み始めましょう。

掘りながら月の光とともに
匂いも感じているので、
③から④は「0.5」の間で
読みます。

実際に掘り終わるまでの時間
意識して、
④から⑤は「1」の間で読みます。

掘った穴に女を入れるので
動さとしてはつながっています。
そこで、⑤から⑥は
「0.5」の間で読んでください。

女を穴に入れることをイメージし、
⑥から⑦は「1」の間を
取りましょう。

そして土を掛けながら真珠貝の裏の
月の光を見ている…と
動作が連続しているので、
⑦から⑧は「0.5」の間にします。

さらに⑧では月の光にきらきら光る
真珠貝をイメージし、
最後の部分を先ほどご説明した速さ
ゆっくりに変化させて読んでください。

先ほどの例文に
間の取り方を書き込んでみます。
太字はゆっくり読むところです。

①自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。【1】
②真珠貝は大きななめらかなふちするどい貝であった。【1】
③土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。【0.5】
湿しめった土のにおいもした。【1】
⑤穴はしばらくして掘れた。【0.5】
⑥女をその中に入れた。【1】
⑦そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。【0.5】
⑧掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
(夏目漱石「夢十夜 第一夜」より)

いかがでしょう?
実際は間だけでなく、
音の高低も変化させて読みますが、

間を変えただけでも
ただ同じ間で読んでいくより
わかりやすくなった
思いませんか?

文章を読む時には、
なるべく同じ音の高さ、
同じ間の長さが
続かないように意識
しましょう。

それが話しているように
読む
ためには
とても大切なことです。

まとめ

今回は「朗読のテンポが一定に
なってしまう時の対処法」

についてお話しました。

読みのテンポを変える、
ということは
朗読をする上で
とても重要な部分です。

慣れてしまえば無意識に
できてしまうことなのですが、
最初は少しずつ理解しながら
進めてください。

同時に、読みの違いを
聴き取る耳を育てることも
とても大切です。

今回はなるべく具体的に
お話してみましたので、
参考にしながら
工夫してみてくださいね。

S-R Labo主宰
松井 みどり

元フジテレビアナウンサー。退社後はナレーターとして活動する一方、舞台活動もスタートし、芝居、朗読、朗読劇などの舞台に年に10本ほど参加。2014年より教える仕事も続けている。

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