こんにちは!
「小説を演じる小説劇研究所」
S-Rラボ 松井みどりです。
今回は朗読したい作家・作品ということで
「重松清」さんについてお伝えします。
重松作品の魅力
重松清さんは今や、
映画やドラマの原作者として
ご存じの方も多いと思います。
たくさん作品を
書いていらっしゃいますが、
私なりにその魅力をまとめてみます。
子どもを書かせたらピカイチ!
本当にそう思うんですよ。
素晴らしい!
子どもが主人公となる作品も
たくさん書いていらっしゃる重松さんですが、
紡ぎ出される言葉は、大人の私は
すでに忘れてしまったものばかり。
ああ、そう言えば
そんな風に思っていたこともあったな…と、
懐かしく思い出される言葉が
とても多いのです。
大人が書く子どもは、
大人の理想の子供になりがちな部分が
ありますが、
重松さんの書く子どもたちは、
自分の人生をそのまま受け止めて
不器用だけど一生懸命に生きています。
大人から見ると少し厄介と思われるかも
しれないけれど、その瑞々しい感性は、
まさに子どものものだと思います。
だから、子どもから大人まで、
多くの人たちにその作品が
愛されているんですね。
感情移入しやすい作品
重松さんの作品は、
人の心を揺さ振る、いわゆる
感動作がとても多いと思います。
一般的には、朗読は音の世界なので、
複雑な人間模様やクールな結末よりも、
心が温かくなり思わず目頭を
熱くしてしまった…という作品が
好まれます。
そういう意味で、とても朗読には
向いている作品が多いのです。
もちろん泣ければいいのかというと、
そんなことはありません。
しかし人を泣くほど感動させるには、
その人の心を納得させるだけ、
登場人物たちが物語の中で
生きていなければいけません。
重松作品に出てくる登場人物たちは、
不器用だったり、真面目だったり、
一生懸命だったり…いろいろなところに
ぶつかりながら成長していくので、
読みながら思わず感情移入し、
最後には笑顔で泣いてしまうのです。
短編に傑作が多い
こう書くと短編作家なのかと
思われてしまうかもしれませんが、
そういうわけではありません。
長編にも素晴らしい作品は多いのですが、
短編にも長編に負けず劣らず
素晴らしい作品が多いのです。
作家さんによってやはり個性があって、
長編では素晴らしいものをたくさん
書いているけれど、短編はあまり
書かない方もいらっしゃいますね。
重松さんは長編も短編も、
それぞれに素晴らしい作品が
たくさんあります。
朗読は基本的には
長くても40~50分というのが
聴きやすい長さだと思っているので、
短編を多く書いている作家さんは、
こちら側から見ると、大変ありがたい
作家さんと言えます。
たくさんの作品が
朗読されているのも、納得です。
おススメ作品
「ささのは さらさら」
最初は文春文庫「季節風 夏」
に収蔵されている
「ささのは さらさら」です。
父を病気で亡くし、
母、弟と三人で暮らしている
高校生のミチコ。
このままの生活が続くと
思っていたのに、ある日母が
再婚したいと言い出し、
それなりに安定していた生活に
変化が訪れます…。
この話は私が主宰する
小説劇ユニット・Mido Laboで
2回上演しています。
私はミチコを演じましたが、
母が他の男性に心を動かしたことが
どうしても許せない
思春期の女の子の気持ちが、
本当に瑞々しく書かれていました。
ミチコの一人称で書かれていはいますが、
セリフが多い文章なので、
ミチコと母、ミチコと弟、ミチコと再婚相手、
という会話の部分の表現の仕方が
ポイントです。
あとはクライマックスのホタルのシーンを
どんな風に読むか…ホタルの光を
お客さまにも感じていただけるように
読みたいところ。
ちなみにこの「季節風」というシリーズは
春夏秋冬とあって、それぞれの季節に
合わせた作品が入っている、
大好きなシリーズです。
「すし、食いねェ」
続いては新潮文庫「日曜日の夕刊」に
収蔵されている「すし、食いねェ」です。
テレビ番組の取材で、夫、6歳の息子と
一緒に銀座の高級寿司屋に
行くことになった主人公の女性。
ちょうど夫と喧嘩をしていた女性は、
憂さ晴らしとばかり、
頑固な店主がいる店に夫と息子だけを
向かわせ、自分はモニターで見ている
ことにします。
すると案の定、
そういう店に慣れない夫は
番組のいいカモとなってしまうのですが…。
この作品は「2030夜の図書委員会」という、
私が主宰した朗読会で
読ませていただきました。
日々一生懸命生きている人たちの
暮しや心に寄り添い、
スカッとしながらもジンワリくる…
絶妙のさじ加減の作品です。
この作品も
たくさんセリフが出てくるので、
ディレクターの軽さ、夫の優柔不断さ、
息子の純粋さ、店主の頑固さなどを
どう表せるかがポイントになります。
この「日曜日の夕刊」という本は
週刊誌への連載をまとめたもの。
1回2ページの4回で完結、という
サイズなので、
朗読にピッタリの作品がそろっています。
「ウイニングボール」
最後、どれにしようか迷いましたが、
もうひとつ文春文庫「季節風 秋」から
「ウイニングボール」をご紹介します。
近所の草野球チームに所属する
二十代のフリーター男性が主人公です。
いつも試合を見に来る
松葉杖をついた少年がいました。
強烈なヤジにむかつく青年ですが、
ある日、なぜ彼が具合が悪そうなのか、
それでもなぜ草野球の試合を
見に来るのかを知り、心に変化が起こります。
ずっと「とりあえず」で生きてきた青年が
初めて必死になる…その青年の気持ち、
決意が、野球というフィールドを使って
書かれている、若者の成長物語です。
この作品も主人公の青年の
一人称で書かれていますが、
だんだん気持ちが変化していくので、
地の文の読み方が重要です。
ラストシーン、青年と一緒になって
青い空とボールが見えるか…
そこまで物語の中に
お客さまと一緒にいたい作品です。
この話は何度読んでも
泣けてしまうんですよね…野球好きには
たまりません。
いつか必ず舞台で読みたいと思っています。
まとめ
今回は、
朗読したい作家・作品ということで、
「重松清」さんをご紹介しました。
私がご紹介するまでもなく、
たくさんの方に朗読されている
作家さんです。
ご紹介した作品は
どれもおススメですので、
ぜひ手に取って
読んでみてください。
必ず、あなたの心に
刺さる作品がある筈です。
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